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もう一度『雲の向こう、約束の場所』 

[2007/04/24] | 感想系 | トラックバック(0) | コメント(0) | TOP ▲

 ずっと前からその名前が気になっていたのに、新海誠の作品を見ていなかったのは、ただの怠惰でしたが、今回見てみたのは単純に、“きれいなアニメを見て、あまり何も考えずに癒されたい”と思ったのだったような。けれど実際に目にしてみて、想像以上に感動してしまったということと、決して何も考えずに見ることなんかできなかったということを、とりあえず書き留めておきます。

 「ある意味で、無残な話、残酷な話」という言葉を、見終わった直後の感想でメモしたんですが、それがどういうことなのかを、うまく人に伝えられないまでも、もう少し自分なりに整理してみないわけには行かないな、と。――それで、少し感想を筋道立てて整理してみようかとあがいてみたりもしたんですが、どうもうまく行かないんで、開き直って丸ごとやり直し、まったく個人的な感想を書いておくことにします。

雲のむこう、約束の場所 雲のむこう、約束の場所
新海誠、 他 (2005/02/17)
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 回想からはじまる冒頭の導入。夢。パラレルワールドの世界設定。この作品は、一篇の夢幻譚だと思うんですね。それはそれでいいんですよ。
 「今はもう、遠いあの日。僕たちは、かなえられない約束をした。」――それはやっぱり、決して“かなえられない約束”なんじゃないかと私は思うんです。
 少年から青年へ、この物語の3年間という時間は、そういう特別な時間を描いているんですよね。少年の日の夢は、そのほとんどが“かなえられない”ということを知って、たぶん私なんかは大人になってしまったような気がします。なのに、ヒロキとタクヤはあんなすごい飛行機さえ作ることができてしまう。“遠いあの日の約束の場所”へ行くことができてしまう。だから、これは“夢”の話なんだよなぁって。ただ、夢には解釈に悩むことがよく出てくるもので、この夢にもいくつか気になってならないことがあります。

 個人的に、私も高校進学と同時に転校をして、友達もいなくて、「僕だけが・・・」「私だけが、世界に一人きり。取り残されている。そんな気がする。」という、そんな気持ちは、とてもよく分かるような気がします。そんな気持ちは、少年から青年へと成長していく中で、誰もが通ってくるものなのか、それは私にはよく分からないですけど。その寂しさの中で、“特別な誰か”に焦がれる気持ちも、だからよく分かる気が。

 「ずっと、ずっと、探してた!」

 恥ずかしいですけど、ここ、ちょっと涙ぐんでしまいました。ただね、ヒロキが「僕はもう、何もあきらめない」と言うのを聞いたら、今度は何だか考え込んでしまいました。それはつまり、「でも、僕を囲む世界は、この先、何度でも僕を裏切る」と知りながら、「何もあきらめない」って何だよってことかな。
 だから私は、「今さらのこのこやってきて、何かと思えば夢の話か、お前を見てるとイライラするよ」というタクヤのほうに思わず共感してしまったような気がします。「僕は、もしかして間違えた場所に来てしまったのではないか」、「今では、サユリの夢のほうを、現実よりも現実らしく感じている」、こういう動機を肯定してしまっていいのか、ってことですよね。

 「塔の先、他の世界まで繋がっていそうだ」とヒロキが感じていたあの塔は、パラレルワールドを開く力を持っていて。それは“もしかしたら間違えた場所に来てしまった”自分を、本来あるべきだった場所に連れて行ってくれるものだったかもしれなくて。でもそれは、「誰もが手の届かないもの、変えられないものの象徴として見ている」ものなんだ。
 「そう思っている以上、この世界は変わらないだろう」っていうけれど、手を伸ばせば届きそうなところに人生のリセットボタンが見えているなんて、私なら耐えられない。

 どうしてあの塔は壊されなくちゃならなかったんだろう。

 いや、その答は今、私が書いたとおりで、手を伸ばせば届きそうなところに人生のリセットボタンが見えているような夢は、破られるべきなんだと思いますよ。甘い夢に見えて、それは悪夢なんじゃないかと思う。――しかし、世界を“違う夢”に書き換えられるかもしれないという可能性とは、それは何て甘美な誘惑だろう!

 決して届かないはずの“約束の場所”に辿りつけてしまうという夢の中で、世界を書き換えられる可能性を自らの手で破壊してしまうんだな、ヒロキは。だけど、自分や世界にあったかもしれない無限の可能性と引き換えに、彼は“特別な誰か”に出会うことができたってことなんだろう。

 「約束の場所を失くした世界で、それでも、これから、僕たちは生きはじめる。」

 この結末は、だから、これで正しいと思います。

 ただね、少年時代はもちろん、青年時代ももう遠く過ぎ去ってしまった今の私から見れば、この物語の全てがまた、遠い日の甘美な夢かなぁ、と思えてしまうのが寂しい。
 「かっこいいから!」「せっかく拾ったから!」「変形させたいから!」・・・いや、いいですよ。すごくいいです。まるでガンプラの話みたいですよね。要するに彼らが飛びたかったのは、そんなようなもんだったんだということも、ここではちゃんと分かっていて描かれている。
 「付き合うって・・・何すればいいのか、よく分かんないしさ。」・・・はぁーっ!甘酸っぱい!! (笑)
 新海さんって誠実な作家なんだろうな。だからこそ、彼らの全ては“これから”なんですよね。そして間違いなく、「僕を囲む世界は、この先、何度でも僕を裏切る」ことは、残酷に繰り返される。

 「・・・でも、僕にはそのとき、サユリが輝く世界の中心にいるように見えたんだと思う。・・・ああ、そうか。今、とても大切なことが、何か、分かった気がしたのに。」と言っているヒロキはまだ、そのことにしっかり気付けていないかもしれないけど、「夢が消えてく。ああ、そうか。私がこれから何を失くすのか分かった。」と言っているサユリは、そのことにもう、気が付き始めているのかもしれないですね。

 だけど、過去に繋がるあの塔は、壊されなくちゃならなかったのかもしれないけど、未来に繋がるあの塔を、彼らは“これから”築いていかなきゃならないんじゃないだろうか。
 「いつも、何かを失う予感がある。」
 これは二重三重に、何かを失いなおす話なのかもしれませんね。映像の美しさと裏腹な、その残酷さに、胸が締め付けられるんじゃないかと私は思ったような気がしてなりません。誠実さって、きっと残酷なものなんだ、何だかそう思います。


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