Vガンダムの狂気 

[2006/08/26] | 随想系 | トラックバック(0) | コメント(4) | TOP ▲

 私はまぎれもなく『Vガンダム』を富野作品の中の最高傑作の一つに挙げている一人ですが(笑)、別に「既存の枠を壊したから」そういう評価をしているわけではなかったりします。
 では何かと言えば、『Vガンダム』ほど、「狂気」を描ききった作品を私は他に知らないからなのです。(zsphereさん

 誰か「Vガンは最高だ!」という人が来てくれないかなと思っておりました。(にこにこ)
 「Vガンダムは狂気の見本市」とは、さすが言い得て妙ですね!

 時代を予見したというのも、よく言われることでもあり、実際まさしくそうなんですよね。富野さんに何故そうしたことができたのかと、よく不思議に思います。それは別に超能力でも何でもなくて、もしかしたら彼は“人間”を真摯に見つめているだけなんじゃないかとも思います。「富野アニメには思想がある」みたいな持ち上げられ方を昔はしましたが、彼の作品は思想を押し付けてくるのじゃなくて、ある状況の中に人間を置いたと仮定したときのシミュレーションを、容赦ないまでに誠実にやってるだけなんじゃないのかと。

 zsphereさんの例示くださったVガンダムのキャラクターたち、それぞれの“狂気”、いちいちうなづけます。思うんですけど、それらの狂気の凄いところは、実際に私たちの身近にも普通にあり得るものだということ。もっと言えば、たぶん私の中にも、そのある部分は内在してるものだろうな、と納得がいくものであるところなのではないでしょうか。
 そういう意味で、まぎれもなく現代を生きている人間の秘められた内面を、鋭く言い当てている。それはよくわかる気がします。

 9.11以降の現代で言えば、狂信的な理想に走るテロリストの側のことを言い当てている部分に誰もが注目しているという気がしますが、私にはむしろ「テロを抑えるためならば、あらゆる行動が正当化される」というアメリカ側の狂気も鋭く示しているような気がします。(資本主義、自由主義、……民主主義だって、大多数の支持する合理的な考え方ではあっても、決して絶対的な価値観ではない。それを押し付けるのに手段を選ばない“主義者”には、やはりある種の狂気が宿っているのではないかと思います。)

 身辺にあふれる狂気の中を、おっしゃるように「キレイ事」で駆け抜けようとしているウッソもまた、現実から遊離した狂気を生きているという指摘も、まったく同感です。

 悩むんですけどね、それでも私にとってVガンダムという作品は、どうしても富野アニメの中での傑作には位置づけられそうにありません。(…今のところ。ラストを見て豹変したら笑ってやってください。)
 なぜそう思うかというと、zsphereさんのような、物語の産み手でもある視点ではなくて、私は愚衆の一人だからなんだろうな。私には、その世界観が鳥瞰できないんですよ。中に入り込んでいってしまう。そうすると、言ってることが前に書いたことと矛盾するようだけど、何が正しいのか、どう生きるべきなのか、考えずにはいられないんです。
 ここ、難しいんですけど、私はその答えを作者に押し付けられるのは大嫌いなんです。だけど、物語の産み手がその可能性を見出し得ていないのも、どうにもつらい。
 作者の都合や思想で、彼は作品をどうにでも作ることができるけど、富野さんはそれをしない人だから好きなんです。でも、Vガンダムの富野さんは、可能性の手がかりはここで掴んだかもしれないけど、まだそれを他者に示すだけの整理ができていない気がします。なので、私も一緒に悩むばかり。(♪くーるーしみーしーか みーえなくてー♪)

 たとえば狂気。本当に怖いのは、それが物語の中だけにあるものではなくて、身近に、私自身の中にも潜んでいるものであること。
 ただ、そうした狂気とは、現代に特有なものなのでしょうか?

 狂気と正気とは、実に紙一重、背中合わせの状態で、人間の知とともに在ったものではないのかと私は思います。ただ、かつての人々は、それをもう少し上手に飼い馴らしていたのではなかったか。
 ひとつの可能性として、“祭”などはどうでしょう。あれはまったくの狂騒です。そこにある狂気の可能性。また、能や狂言といった芸能の原型にあるものも、ある種の狂気です。モノが憑いて、おのずと語るものが物語。もしかしたらエンターテイメントというのは、人が狂気の世界へ行って、帰ってくることなのではないのでしょうか。(はじめから出口が見えているのでは、狂気の世界へ行ったことにならないけれど、行ったきり迷いっぱなしで、最後まで帰り道の入り口を見出し得ないのは、それもまたよくない。)

 長くなってしまいました。ここまで見てきて、富野さんが、このむせそうなぐらいの狂気の中で精一杯、何かを見出そうとしている気配は分かってきましたけど。この愚かな一人の観衆に、それを自分の目で見出した思いを味あわせてもらえるのかな。さあ、いよいよ終盤です。
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コメント

> 多分

Vガンを最終的に認めた方達は、ブレンに非常に抵抗を感じたんじゃないかと思う。

なんだか根底に流れる気分がすごく違うんですね。

とにかくどちらも最終回を観て、コロッと感想が変わりました。

> はじめまして

こんにちは。私もVガン好きですよ。富野アニメのベストを挙げろと言われると、逆シャアとどちらにしようか迷うくらいですね。完成度は天と地ほどに違いますが。
最近の富野由悠季は芸能やエンターテイメントの領域を目指しているようですが、そっちでは宮崎駿に絶対勝てないので、もういちどVガンな方向に戻って欲しいと個人的には思ってます。

> えーと

「アニメ監督」ならば、ガンダム的なにおいの一切しない作品をやってほしい。Z中途半端な焼き直しのようなものではなく。
今までのところ、彼は「ガンダム監督(または人型ロボットアニメ監督)」なのだと思う。
イデオンなどとも違う、ロボットが出てこない作品に手を出してほしい。「アニメ監督」でありたいのなら。

>

監督自身が「アニメ監督」である
といっているのか(いっているだろうけど)、
それを、猫さん、あるいは監督それぞれが
どういう意味で言っているのかによって
返答するニュアンスが違ってくるのですが、富野監督がご自身で言い訳してるけど
ロボットがらみでないと仕事が来ないんでしょう。
1から10まで自分の意思で仕事ができる人間なんていやしませんから。

>今までのところ、彼は「ガンダム監督(または人型ロボットアニメ監督)」なのだと思う。
あー、なんか
監督自身の声で
「そのとおりです。ですが逆に言わせてもらえば所詮ロボットアニメ監督でしかなくてもここまでのものができるんだという例にしていただきたい」
というのが脳内再生されてたり。

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