テレビ版の記憶が錯綜するいらだたしさ 

[2006/03/06] | 新訳Ζ | トラックバック(0) | コメント(5) | TOP ▲

『星の鼓動は愛』の感想をあちこち読ませてもらっていて、見方がさまざまなのはいいと思うんですが、お願いですから「テレビ版を先に見とかなきゃ、この物語は分からない」って断言するのは、本当にテレビ版を見たことがなかった人だけにしませんか?
今回の三部作の中では表現されてないものを、自分の脳内で補完しながら見てしまった人たちは、スクリーン上のものを直視してたとは言えないことを、もう少し自覚しませんか。私なんかテレビ版のことは、もう相当忘れているはずなのに、それでも遠い記憶のイメージがかぶさっているのが邪魔で邪魔で。
あらすじとか勢力関係とかなら、600円でパンフレットを買えば、そこに載っているじゃないですか。事前あるいは事後の知識とすれば、それで十分だと思いますよ。文章ではニュアンスが分からないと言われるのなら、その微妙なニュアンスが変わったところこそ今作のキモなのに、なぜ20年も前の旧作の陰鬱なニュアンスを、未見の人にまで事前に刷り込もうとするのですか。
ストーリーの進行でさえも、あちこちと改変が入っているわけだから、あらかじめテレビ版なんか見たら、正直かえって混乱するとは思いませんか。(何故クワトロは演説しないんだって言われたって、今作ではしてないんだから。してない演説をしたと思って見てしまっては、今作で表現されたクワトロの姿なんか見えやしませんよ。)
この程度のストーリーの説明では飲み込めないという意見も多いですが、アニメだと思って馬鹿にしてやしませんか。あまりうまい例えじゃないけど、たとえば、ゴッホの絵の遠近法がおかしいとか、質感が分からないとか、自然な色使いじゃないとか、そういうことで仮にも彼の作品は駄目だって言ったりしますか。叙事詩にも似た物語の表現スタイルの問題を言うときに、そういう部分部分の説明不足で揚げ足を取りますか。
一回見ただけでスッと飲み込めない部分があるのには、むしろテレビ版のイメージの記憶が錯綜するいらだたしさを私は感じます。テレビ版の記憶が濃い人ほど、何度も繰り返して『新訳』を見ないと、イメージを転換できないのじゃないだろうか。

これは私の世代にしか分からない話かもしれませんが、『機動戦士ガンダム』という作品が本当に好きだったからこそ、続編として作られた『Ζガンダム』に、そのことだけでも胡散臭さや不快さを感じた人は少なくなかったはずだと思うのです。それが一番いやだった人が、富野監督本人でしょう。
しかしたぶん、そういう過去へのこだわりもまた、人の意識の膠着性(*)のひとつなのです。『Ζガンダム』という作品では、そうした人の業、執着を超えることが如何に難しいかということが表現されていましたが、今作によって、その超克は、20年かかってようやく実現されたのです。
『ガンダム』という偶像を、偶像のまま愛し続けたい人には、このことは不快でしょう。

20年前の「Z(ゼータ)」のコンセプトは"いつまでもロボットアニメなんか見てたらどうしようもねえぞ"というものでした。


20年前よりかなり切れ味のいいパンチをもらって、正直、私もけっこうダメージ喰らってます。オールドファンには、マジできつい一撃。まさにカルマ落としかな?

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*Ζガンダムの企画書には「組織と個人の軋轢を見上げる少年を通して人の意識の膠着性を見る」ことが演出上のテーマとして挙げられていたそうです。(「yasuakiの新批評空間」)
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コメント

> ごめん

私、本気でこう思います・・・。
「ゴッホの絵の遠近法がおかしいとか、質感が分からないとか、自然な色使いじゃないとか、そういうことで仮にも彼の作品は駄目だって言ったりしますか」

ゴッホの初期習作が見つかって、鑑定前の値段が2万数千円だったというニュースを聞いて「そうだよなぁ、ゴッホの絵なんか、鑑定書がついてなきゃそんなモンだよな」って思った(笑)。
ゴッホの絵に何億も出すって奴の気が知れん(爆)。ファンの人ごめんなさい。

> 結構

私は細かいところは忘れてたんですが見てると思い出しちゃいますよね

>

 私もTV版の記憶という「重力」に思考を縛り付けられていた一人です(^O^)
 ただ、私がTV版で一番ストレスを感じていたのは「作画レベル」なんですよ(話の筋は2の次だ)。回を追うごとに画面がしょぼくなっていくのが解りましたから。
今作を見て、ブラッシュアップされた画面を見ては「おおおっ!」、
新作画面のバトルを見ては「うおおおおっ!」と身を乗り出し、床を踏む足に力が入る状況の連続に「劇場版を創ってもらってホントに良かった」と感激したのはTV版の記憶(TV画面と言えばいいのか)があったからだと思います。新作のキャラ描写も良かったですし(エマさんに、萌えーっとしましたから、旧作は職業軍人の顔つきが多かったですから)最近のガンダムに見慣れた人にとって(私は見ていないが)今作の作画はどうだったのでしょうか。
私の知人で劇場版に興味がある人がいるのですが(ガンダムの知識はほぼゼロ)、「とりあえず見てみるんだよ!」とブライト艦長のように劇場のシートに叩き込めば良いのか、どうか、囚人022さんの意見を見てから悩んでいます(^O^)。
ちなみに私は「ガンダムの続編」が作られる、と聞いた時、素直に喜んだミーハーです(^O^)

>

負け時と感情的になってますね(笑)

個人的にはTV版を知らない人の方がわかりづらいんでないか?と思います。二部もそうでしたけど場面が凄く飛びますから。TV版知ってる人は「あ、次はこのエピソードか」って分かりますが、知らない人は「え?なんで急に時間が飛んだの?」と思うんじゃないかと。それが積み重なると、物語に入っていけなくなってしまうんです。

富野監督はあの映画を見て「同じような戦闘が繰り返されているようにしか見えなくて愕然とした」とゼータエースのインタビューで語っていますが、そう見えてしまうんじゃないかと。作った本人でさえそう見えてしまうんですから。

TV版を見ないと良さが分からないなんてことは「言語道断」だと思いますが(良さが全く違いますからね)、あれは富野アニメとして見ないと理解できない代物である気はします。

> (チケット)買うた止めた音頭

TV版も最初の数回を覗いて殆ど見ず、ましてや映画版は1も2も未見で、ただでさえ先日SEED全話見て酷評してきたばかりで、「ガンダムなるもの」には、かなり温度の低くなっている私ですが。
おまけにどうやら、ハッピーエンド依存症である事を自覚しつつある私ですが。

さあて、そろそろかりたてられてきたかな?


まだかな?


煮え切らないのは仕様です(^^;)

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