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杉井ギサブロー『あらしのよるに』 ― 「友愛」は最も厳しい選択(だから尊い) 

[2009/10/16] | 感想系 | トラックバック(1) | コメント(1) | TOP ▲

 毎度今さらながら、杉井ギサブロー監督の『あらしのよるに』(2005年)を観ました。正直、「少し癒されたい」ぐらいの気持ちで借りてきたんですが、思いがけず、これは泣いてしまいました・・・。
 シンプルな「寓話」の力ということについても考えさせられたのですが、しかし、こうも「やられた!」というところが何回も来てしまっては、ただ素直に「まいった!」と言うしかありません。(今回の記事は、twitterでkaito2198さんとお話した内容をサルベージしてきてリライトしてみています。)

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ある嵐の夜、1匹のヤギ(メイ)が、山小屋に避難してきた。同様に1匹のオオカミ(ガブ)も同じ山小屋に避難してきた。真っ暗な闇の中、かぜ気味で鼻の利かない2匹は、互いの正体を知らない(勘違いした)まま夜通し語り合い、意気投合する。そして「あらしのよるに」を合い言葉に、翌日再び会う約束をする。
翌日、2匹は互いの意外な正体を知ることになるが、喰う者(オオカミ)と喰われる者(ヤギ)の関係を超えて、2匹は「ひみつのともだち」となる。しかしそれは、互いの種族にとって、決して許すことのできない禁断の友情であった。

 kaito2198さんは、富野監督が「杉井さんのアニメに対する感性の繊細さはひょっとしたら宮崎監督以上かもしれない」とおっしゃっていたと紹介してくださいました。
 宮崎監督のアニメの気持ちよさをスポーツカーの疾走感に喩えるとしたら、杉井ギサブロー監督のそれは高級車の心地よさではないでしょうか。「もの凄いアニメだぞー」という加速感も振り回され感もないのですが、気がつけば、とても滑らかに物語の空間へと誘われている。恥ずかしながら、ぱっと見では、どこが凄いのか分からないのが凄いですねー。(kaitoさんは杉井監督の「画面で感情を揺らす」力が凄いとおっしゃっていました。そう、まさにアニメならではの演出の力なんですよね。)

 とても素晴らしい作品だという点では、kaitoさんと感じ方は一致したんですが、なぜか見解が分かれてしまったのは、「メイは素直に女の子だったらよかったのに」というご意見。
 『あらしのよるに』の原作の絵本では、ヤギのメイ君の性別は曖昧らしいのですが、杉井ギサブロー監督はアニメ化にあたって「男の子」と解釈しています。そのことで、寓話としての普遍性を深いものにしていると私は思ったのですよ。

 狼のガブとヤギのメイを、男の子、女の子にしちゃうと、二人の関係は「恋」に見えちゃいます。恋に駆られて社会を逸脱する話は(ロミオとジュリエットの例を引くまでもなく)自然に受け入れられやすいものですが、はてさて?
 「喰うか喰われるか」という現実の中で、「友愛」こそは最も厳しい選択である(なればこそ、それは得がたい尊さを持つ)、というのが私の『あらしのよるに』の感想だったんですよ。

 友情が、いつ「喰うか喰われるか」に暗転するかもしれない可能性を常に秘めた緊張関係の中で、なぜ敢えて(空腹を耐え忍んでも)友人メイを喰わないのか、というガブの気持ちのほうに感情移入しながら、私は物語にだんだん引き込まれて行きました。最初のうちは(ガブの友情を信じて疑わない)メイは少し頭が悪いんじゃないかと思っていました。キャスティングボードは力に勝る狼のほうが持っているんだろうってね。
 それが幾度かのクライマックスで「はっ!」と驚かされたんですよ。「違う!本当は怖いのが分かっていて、それでも逃げないメイのほうが、実は強い信念を持っていたのか!」と。

 この二人の友情は、常識的には理にかなっていません。そこに引っかかるのは誰しもそうだと思います。だから、男の子と女の子の恋だと理解してしまえば、「そうか、恋しちゃったらそういうこともあるよね」って納得しやすい。そして、人は簡単に納得したいものですから、「なるほど恋だね」って納得してスッキリしたら、それ以上考えずに簡単に忘れ去るでしょう?
 『あらしのよるに』のシンプルな物語が私の胸に深く食い入って忘れられないだろうと思えるのは、そこで簡単に記号化されやすい「恋」ではなく、容易には飲み込めない「友愛」を置いているからだろうと思うのですよ。(これは私の好きな、多くの富野アニメの「難解さ」にも通じる理解の仕方ですけどね。)

 『あらしのよるに』の、クライマックスが何度も繰り返される構造は、7冊の原作絵本をベースとしたからのようですね。もっとオリジナル分が多いのかと思ってました。
 杉井監督はこの作品で、原作を解釈し、効果的に演出することに徹したのでしょうか。その点で比較してしまえば、原作ものが多い宮崎監督でも、もっと「オレ解釈」が強いと思います。まして富野監督には自ら語りたい言葉が多すぎるので、オリジナルへのこだわりは捨てられない。

 以前に『銀河鉄道の夜』を観て、杉井ギサブローという人は凄いとおもっていたんですが、ますますその認識を深めました。あれよりさらに「子ども向け」な装いの作品ですが、そういうところでこそ手を抜かず、簡単に分かりやすくはしていないところが素晴らしいと思いました。オススメできる作品です。

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[tag] 杉井ギサブロー fc2ファビコン

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> なるほど

僕なんかは、つい、やおい、として見てしまった気がしましたが、スタンダードな友愛とした方が感動できますね。

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