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小説 『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』 

[2008/11/17] | 感想系 | トラックバック(0) | コメント(6) | TOP ▲

 小説やコミックより、絶対にアニメというメディアのほうが好きな私ですが、これは率直に言って面白かったです。読むのが遅い私にしては、かなり速いペースで読み終わることが出来ました。富野さんの小説への個人的な評価を、少し上方修正しないといけなさそうです(笑)。

機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ〈上〉 (角川文庫) 機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ〈中〉 (角川文庫―スニーカー文庫) 機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ〈下〉 (角川文庫―スニーカー文庫)

 ソノラマ文庫時代の『機動戦士ガンダム』 (1979-80年)や『伝説巨神イデオン』 (1981-82年)と、1989-90年に角川スニーカー文庫で出版されたこの小説を読み比べると、テンポが良くなってることがはっきりと感じられると思います。約10年の間に、けっこうな数の小説を書いておられるんですよね。
 しかし、ここから『クロスボーン・バンガード』 (1991年)を経て、先日読み終わった感想を書いたばかりの『機動戦士Vガンダム』 (1993-94年)へという ’80年代末から’90年代前半あたりというのが、富野さんの“小説家”としての活動に、一番脂がノッていた時期だといえそうです。

 前にも書いたかもしれないけど、富野小説のテンポっていうのは、絵コンテを文章化したとでもいうような印象が私にはありまして。・・・その言い方で言うと、初期の『ガンダム』や『イデオン』のノベライズでは、世界観の文字設定みたいな部分が多く、それはアニメの世界観を補完するという意義は大きかったんだけど、文章表現のテンポとすれば、ストーリィの動きがそこだけ止まっちゃうという短所もありました。
 その点、この『閃光のハサウェイ』では、(相変わらず能書きが多い傾向はありますが、・・・)よどみなくストーリィが流れていきながら、そのテンポを止めることなく物語空間を構築するテクニックがかなり巧みなものになっている気がします。

 もっとも、『ガンダム』や『イデオン』では、(例えば"モビルスーツ”という概念ひとつの説明などをとってみても、)そこでの世界観を一から構築しなければならなかったというハンディがありました。『閃光のハサウェイ』はシリーズものの続編のほうなのだから、そんなもんでしょうという言い方もあるかもしれないけど、単体で(自律した)“小説”として立てようとする強い意識は、それらに比べると、明らかに薄くなっていると言えるかもしれません。よく言えば、肩の力が抜けてきているということ。
 私は“ラノベ”という概念がよく分からないんですけど、そうしたものに近づく傾向というのか・・・というよりも、時代的にも“軽い”ものが志向されるようになってきたところに合わせてきているのか。「小説>ラノベ」、「重厚>軽薄」、いずれも自明のことではないと私は思ってますので、そこで良し悪しも何もないわけなのですが。(読みやすいに越したことはないけど、・・・。)

 ただし文体は、そういうわけで軽やかさを身につけてきていますけど、物語の内容的には、これはもうドシッと重たい(!)。
 そこのギャップが逆に生々しい切り口となって、作中で展開される事象に手触りのたしかさ、ふくよかさが感じ取れる。それが、この小説の大きな魅力になっているのではないかと私は思いました。
 してみると、この時期のアニメ作品(『逆襲のシャア』~『F91』~『Vガンダム』)のほうでは、(同様に“続編の楽さ”の中で仕事をしているにも関わらず、)実のところここまでテンポよく物語を弾ませることができていなかったと思います。作家というよりむしろ、アニメ職人というべき(?)富野由悠季にして、何故そうなってしまったのかな、と思わずにはいられません。
 それこそつまりは、個人の中から生まれる小説という媒体と、スタッフワークによるアニメというものの差異、・・・ということになるんでしょうか。

 『逆襲のシャア』に出てくるハサウェイ・ノアというキャラクターが、(クェス・パラヤもそうですが、)私はあまり好きではありませんでした。何のために出てきて、何のために生き残ったのか。入れなくてはならない気がするから入れたはみたが、最後まで監督自身が若者は分からない、としてしまったような印象があります。
 なので、『ガンダム』に一つのピリオドを打ったあの作品の中で、ハサウェイの物語だけは奇妙な中途半端さで宙吊りになっていて、そういうところを直視する。きっちりと結末を付ける。いわゆる二次創作のサイドストーリィ的なものを原作者本人が敢えてやる。
 ・・・そうして考えていっただけで苦しくなってくるのですが、クェスの死という傷を経てきたハサウェイという少年は青年に成長し、そしてきっちりと彼自身の物語を締めくくりました。無残な悲劇ですが、その透徹ぶりにはちょっと感動があります。その痛切さはまったくTVアニメ的ではなくて、かなり文芸的、強いて言えば映画的なものでした。

 この本を実際に手にする前、そのあらすじだけを聞いて私は勝手に、ガンダムという名は冠していてもモビルスーツとかは出てこない、もの凄くストイックなストーリィなのかな、という思い込みを持っておりました。あにはからんや、なかなかの活劇でもあって、渋い物語ながら不思議な実在感のある青年たちの人間ドラマは、実にエンターテイメントだったなぁと。
 余韻の残る結末ですが、読後感は爽やかであるのが何とも言えない。とにかく魅力のある小説でした。

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コメント

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このコメントは管理人のみ閲覧できます

> ハサウェイの感触はいいと私も思ってます

囚人022さんのなか、富野小説の評価はそんなに低かったですか(笑)。

とまあ、今まで拝見させていただいていた書評を見る限り、やはり一番ディープかつマニアックな富野病気三部作は御覧になってないようですね。あれを見ると、もう帰られなくなっちゃうですよー(笑)。

アニメは別にして、富野の小説は手塚先生の漫画に似ているような気がします。

> 世代もあると思いますけど

私たちの世代(第一次アニメブーム世代)は、世間から低く見られていたアニメが評価を受けていくことに無上の喜びを感じていた経験があり、その旗手として富野監督を見ていたわけです。
コミックじゃない、ブンガクじゃない、アニメだからこそ…とこっちが盛り上がっているのに、「当の富野監督が小説?」という、あの時代に感じた違和感を上手く説明はできませんけど。
あと、フィルムで表現したものがすべて、という言い方をしていたのに、本当にやりたかった表現は小説で「補完」しました、というのも何だか冷水を浴びせかけられたような思いはありました。
今でも「アニメ > 小説」ですよ、好きなことから言えば。
ただ、そういうこだわりを払拭して、面白いものは面白いと素直になれたのは、ここで皆さんといろいろお話させていただいてきた成果なのだろうなと感謝しています。
「ビョーキ三部作」も読んではみたいんですけど、なかなか田舎のブックオフでは見つからなくて…。(笑)

> 興奮しちゃうと、日本語が間違う(汗)

なるほど、そういう世代の面もあるんですね、迂闊でした。

確かにアニメとダブるタイトルは、そういった補完する側面が強いですが、だからといって『ガンダム』みたいタイトルだけを借りてまったく違うものをやるってのもなんだかイマイチ弾んでないというか。そのへんの処理は、『ベルチル』はかなり優秀だと思います。個人としては「アニメの補完」というより、もっと単純に「もうひとつのxx世界」として捉えることが多いのです。

でも、どっちかいうと、やはりオリジナルタイトルのほうが、富野由悠季が小説家としての可能性が読み取れるじゃないのかと思ってますね。

> ゼータのシャア

>世間から低く見られていたアニメが評価を受けていくことに無上の喜びを感じていた経験があり、その旗手として富野監督を見ていたわけです。

なるほど。
世代がちょっと下なので完全には分かりませんが、なんとなく理解できます。
(想像すると)いい時代だなぁ。
でも、このときに(上昇してゆく)アニメの評価≒自分の評価みたいな錯覚が一部に生じてしまって、逆に、アニメ(というジャンル)に辛い評価⇒ファン大激怒⇒一般人ド

ン引き、みたいな変な流れが生じたのかも…と思わなくもないです。
アニメが評価されたからといって、(それを好きな)自分のコンプレックスが解消されるわけじゃないんですけどね…。


>こっちが盛り上がっているのに
これを読んで、ゼータ時代のシャアを、ちょっと思い出してしまいました(笑)
もともと富野さんって文学とか実写をやりたかった人じゃないですか。アニメは不本意であると。
なのに、アニメ側の人間として期待される、小説を書くと失望される…。
周囲が勝手に盛り上がって、無理矢理エゥーゴの代表、変革の旗手に祭り上げられてしまった時の、シャアの「んなことまで、俺に期待するのかよ…。なら、やってやろうじ

ゃん、道化をよ(苦笑)」みたいな感じって、やはり、あの頃の富野さんの実感だったのかもしれませんね。

>

私もkaito2198さんと近い意見です。劇場版とテレビシリーズもパラレルワールドですから、小説版もそんな感じだと思ってます。
芝居で言うとハコによって演出を変える感じですね。

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